どうしても怒りがおさまらないときは
もし私が浮気された立場ならどうするだろう、と考えてみよう。
まず、自分の心の内を見つめてみる。
どんな感情の波が発生しているのか。
相手の行為に対する怒りがあるはずだ。
でも、その怒りの感情はどこから来たのだろうか。
それは相手が私の心に生じさせたものなのか、それとも怒りを生み出す何かの感情が私の中にあるのだろうか。
だとすれば、それを探してみようと考える。
一つは、相手から裏切られたことへの失望感。
それも大きいかもしれない。
次に、自分の価値や存在をおびやかされるような不安と恐れ。
さらに、私に対する愛情がほかの人に移ることによって生じる悲しみや、自分の将来に対する不安感もあるだろう。
こういったいくつかの思いや感情が、怒りの感情の根底にある。
それが大きな火の塊のように強力なエネルギーとなって、私の思考や判断を狂わせているのかもしれない。
私自身への評価や、相手を見る目も正常に働いていないのかもしれない。
もし怒り狂った状態のまま、その怒りの感情を相手にぶつけたりしたら、どういう結果を招くか分からない。
おそらく、自分にも相手にもよい結果はもたらさないであろう。
とすれば、しばらく時聞をおくほうがいい。
怒りの根底にある一つひとつの感情と対話してみることが必要だ。
それらの感情の実体や、その源がはっきりしてくると、怒りの感情は消えるかもしれない。
消えなくても、少しは和らぐかもしれない。
心が少し落ち着いた段階で、相手にどう対応するかを考えてみよう。
より建設的な方法が浮かんでくるかもしれない。
怒りの感情を相手にぶつけるのではなく、不満な思いを伝えるという方法もある。
それでも怒りの感情がおさまらないとしたら、どうしようか。
怒りの感情を処理するには、相手に直接ぶつける以外にも、どこかで発散させるという手もある。
このように書くと、「怒っているときは、そんなに冷静になれないのではないか」と反発する人もいるかもしれない。
そういう人は、だからこそ冷静になる時間と、冷静に考えることが必要なのだと思う。
許す・・その喜びは計り知れない
相手と自分のやりとりを思い返してみると、なるほど、自分の行動には自分と親とのかかわりが影響しているな、と思い当たることもあるのではないだろうか。
相手を許せないと思う人、つまり相手を許さない人は、自分自身が許されない、許してもらえない家庭で育っていることが多いように思う。
相手のあるがままを拒まず、受け入れる姿勢が自分にないと、相手は心を閉ざしてしまうだろう。
本当の思いや願望などを抑え、隠してしまう。
そして、受け入れる姿勢のある人に心惹かれる。
隠れて、そういう相手との関係をもつようにもなる。
相手を許せない、許さない自分の側の問題を見つめることが大切なのだ。
すると、許せないことをしたと思う相手に裁くことの愚かさに、気づかされるのではないだろうか。
自分の心がなぜそう動くーのかという原因が見え、相手の行為を生み出したさまざまな要因が見えてくると、なぜ許せないかが分かるようになり、やがて許せると思えるようにもなるだろう。
許すことは理解すること、そして理解することは愛することなのだ。
そして、いままで許せないと思っていた相手を許すことができたとき、人は不思議なほど心の安らぎを感じる。
そのとき人は、ほかの誰でもない、自分こそが許されたのだと、感じるはずだ。
以前、沖縄に住んでいたとき、離婚して間もない女性が『うりずんの家』にカウンセリングを求めて行った。
彼女は、最初、怒りに燃えていた。
「愛人をつくり、自分を裏切った彼を許せない。別れて、もう関係ない人だと思っても、許せないんです」と、涙を流しながら言う。
その苦悩の深さに、カウンセラーの心も暗くなった。
その後、何回かカウンセリングをくり返すうち、彼女はしだいに明るさを取りもどしてきた。
「この間、海に行ってきました。寄せては返す波を見ながら、先生と話した愛について考えてみたんです。
海を見ていたら落ち着いてきて、ふと、自分が生かされているということを強く感じました。
知らないところで、いろいろな力が私を生かしてくれている。
そして、許されてもいるんですね。
彼を許せないと怒り狂ってばかりいた自分が、とても愚かに思えてきました。
そう語る彼女の頬に、涙が光っていた。それは、最初に見せた怒りと苦悩の涙とは、まったく違う涙だった。
自然を前にすると、人は不完全な自分を思い知らされ、謙虚になる。
そんな不完全な自分でも、いまこうして生きていられる。
そして、どんな人も完全ではあり得ない。
その事実に気づいたとき、人を許さないという行為の倣慢さや不毛さにも、気づくことができるのかもしれない。
許し、許される。
その喜びは計り知れない。
その喜びの中にこそ愛があるのだと、私は思う。
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