尽くすだけ、奪うだけの愛は不幸になる
「あなたと結婚できたら、私はあなたを必ず幸せにします!」 映画やテレビドラマのこんなシーンに感動した人は多いだろう。
実際、こうしたプロポーズの言葉を聞いて、「この人が私を幸せにしてくれるなら結婚してもいい」と考え、結婚を承諾したという人もいる。
こういうプロポーズの言葉は、男性が女性に向かって言う事とはかぎらない。
たとえ言葉に出さずとも、心の中でそんな思いを抱いている女性も少なくないだろう。
「この人を幸せにしてあげたい。そのために一生懸命に尽くそう」
男は女を幸せにしてくれる。
女も男を幸せにしてあげる。
そんな期待をお互いに寄せあって結婚する。
そして、現実は?
「君を幸せにする」と言った相手は、結婚したとたんにそんな約束はどこ吹く風で、自分だけが幸せになろうとしているように見える。
あるいは君の幸せよりも、自分の幸せを得ることに専念し、そのために私を利用しているのではないかと思いたくなってくる。
多くの人が、結婚してからそんな現実に直面している。
もし私がプロポーズするなら、また、されるなら、次のようなセリフのほうが説得力があると思う。
「私はあなたを幸せにすることは約束できない。でも、私はあなたと結婚することで、絶対に幸せになります」
一見、無茶な言葉に思えるけれど、逆に誠実さを感じさせる。
真実だからである。
これこそ男のひたすらな恋心からあふれ出た言葉だと思う。
また、結婚だけでなく、恋愛においても、そういう気持ちでいることが大切ではないだろうか。
「結婚さえすれば幸せになれる」と考えている人へ
そもそも、人間が幸せになるとは、どういうことなのだろう。
誰かが自分を幸せにしてくれるのだろうか。
いや、そうではない。
幸せになるかならないかは、自分が決めることなのだ。
究極的には、幸せは自分の心のあり方で決まるものであって、人から与えられるものではない。
相手の態度や言動を自分がどう受けとめるかによって、幸せと不幸せのいずれかになるのだと思う。
このことが分かっていないと、自分が幸せでないのは、相手が私を幸せにしてくれないからだと、相手を責めたい気持ちになってしまう。
この逆もある。
相手が「幸せでない」と言って、幸せにしてあげられない自分を責めてしまう。
あるいは、「こんなに幸せにしてあげようと思って尽くしているのに、どうしてあなたは幸せではないの?」と、相手を責めたりすることになる。
そして、相手に何とか幸せだと感じきせようとして、必要以上に相手に尽くしてしまう。
そのあげく、恋人に逃げられてしまったりする。
そういう幸せの押し売りに、たいていの人は耐えられなくなるからだ。
幸せとは、誰かに与えてもらったり、与えたりするものではない。
自分でつかむものだ。
特に、いま恋人がいる人は、そのことをしっかりと頭に入れておくほうがいい。
相手を幸せにしてあげようとして尽くしたあげく、逃げられてしまった女性は、悲しみと失意と怒りに襲われる。
「私の愛に、何が足りなかったの?」と悩み、苦しむ。
三つ年下の男性に尽くしつづけて、結局逃げられてしまったと訴える30歳の女性から、相談を受けたことがある。
その言葉には、怒りがあふれでいた。
彼が新入社員で入ってきて間もなくからのつきあいでした。
職場では私が先輩で、給料も彼よりずっと上。
恋人の関係がスタートしてから、彼の世話をしつづけてきたんです。
休みの日には彼のアパートで洗濯、掃除、料理。デートで出かけたときの支払いも全部私。
誕生日やクリスマスには、彼の喜ぶものをプレゼントしてきました。
その彼が、もうアパートに来てほしくないと言うのです。
私は泣いて尋ねました。
私の何が不満なの?と。
何の不満もないし、尽くしてくれることはありがたいけど、僕は幸せではないんだと、彼は言うんです。
転勤になったのを機に、彼は引っ越してしまい、私に新しい住所を教えてくれませんでした。
私をさんざん利用し、自分ばかりいい思いをして逃げたんです。
私の体と、私の青春を奪っていったんです。
最初は女性の優しさに惹かれて恋人になったものの、いつの間にか男性は尽くされることに慣れてしまう。
それが当然と言わんばかりに、感謝の言葉一つなく、関心も示さなくなる。
そんな男性の変身ぶりに戸惑い、悩む女性は、自分を責め、相手を責める。
あげくに男性は自分からだんだん離れていく。
こういった例は、決して珍しくない。
相手を幸せにしてあげられる、相手から幸せにしてもらえるという幻想が、そういう悲劇を生むのだと思う。
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尽くすとなめられる。
でも尽くさずにはいられないのですが、やっぱりやめるべきですか?
尽くし過ぎは危険というだけなので、ある程度尽くすことは大事ですよ。
なにより一番大事なのは、相手を大事にできる行動です。
そこを忘れずに。