愛情を求めて浮気したAさんのケース
結婚後にパートナーがか浮気に走るという例は、世の中に多くある。
実際に浮気をしなくとも、「こんな相手とは離婚したい」という思いを抱く人はさらに多くいる、といってよいだろう。
結婚後に「離婚したい」という思いが一度も生じたことがない人など、いないのではないだろうか。
そして、そのことで悩み、苦しみ、自分で解決できずに相談にみえる人が絶えないのだ。
少なくとも、カウンセリングの臨床の場には多く登場する。
そこで、一つの例を紹介しよう(当事者のプライバシィを守るために、状況を多少変えて記述する)。
結婚三年目の三十三歳の男性Aさん。
妻以外の女性との関係が二年間続いていたことが妻に発覚。
一騒動の挙句に、二人でカウンセリングに訪れることになった。
Aさんは、浮気の相手の女性とは、初めは妻帯していることを隠して、つき合っていた。
最近それがばれてしまい、その結果、その相手から奥さんと離婚してくれと迫られたが、迷った挙句に、妻に事実を明かすことになった。
妻は怒り、悲しみ、将来への不安に苦しんだ。
Aさんは妻との関係を修復し、夫婦関係を維持したいという願いから、浮気の相手と別れる決心を固めた。
ところが、その相手はAさんへの復讐に出た。
数百万円の慰謝料を要求し、さらにAさんの職場で彼を中傷する行動に出たのである。
Aさんの妻は、こう語っている。
「夫と彼女との交際を知り、怒りと悲しみ、そして自分自身への反省。夫との対話が欠け、彼の心の渇望を読み取っていなかった」
Aさんが、独身であると偽って、彼女とつき合っていた心理の背景が、妻の次の言葉にうかがえる。
結婚にいたる経緯から、彼の気持ちを過信していた。
彼に協調性がないこと、自分本位であること、などに結婚してから気づき、『結婚しなければよかった』と何度も口にしたことがあった。
「私は甘い言葉を口にするのが苦手で、彼にはほとんど言ったことがなく、彼の気持ちを追い込んでしまったと思う」
結婚しなければよかったという思い。
それを何度も妻から言われてきた夫。
甘い言葉をかけてくれない妻から自分は愛されていないと思い、自分は独身と同じだと感じていた夫は、彼女の甘い言葉や情熱に心が動き、愛し合う関係を二年間続けてきたのである。
妻との結婚生活に疑問を抱いていたAさんは、彼女には妻とは別れるつもりであるとも語っていた。
さらに、離婚手続きをしているとも偽っていた。
こういった、 Aさんが彼女に伝えていたことは真実ではないにしても、Aさんの心の内面の真実を伝えていたのではないかと、私には思えるのだ。
しかし、彼女と妻の双方に嘘をついていたことがばれてしまったことで、現実の問題と対面せざるを得なくなった夫、そして、自分たちの関係を真剣にふり返った妻は、何度かの話し合いの末、結局は二人の関係をつくり直す決心を固めるに至った。
ところで、決心をすることは、そんなに難しいことではない。
人は、さまざまな動機から決心に導かれる。
でも、問題は決心した後だ。
具体的な行動が決心に伴わなければ意味がない。
不倫の原因は、結婚前にすでに生まれている
この事例からも明らかだと思うが、結婚後に愛情が移り変わるという現象は、結婚するまでに、そして、結婚してからの営みの中で、愛し合う関係を育てる技能の学習を怠ってきたことの結果として、しばしば生ずるといってまちがいないだろう。
要するに、結婚しているか、いないかとは関係なく、愛し合っている男女が、二人の間の愛情の関係を育てるために、どんな努力を積み重ねてきたかにかかっているということなのだと思う。
もちろん、いわゆるか不倫の行為に走る者の倫理観の問題もある。
双方の結婚観の問題もあるだろう。
双方の性格の問題も当然あるはずだ。
その一つ一つの問題と対面し、真剣に話し合いをすることも大切だと思う。
と同時に、双方が、浮気や不倫を招くさまざまな要因を探ることが欠かせない。
特に、それぞれが、自分の側の問題と課題に気づき、その気づきをバネにして、新しい課題に取り組むことが必要だと思う。
それは、二人の関係を続けていくことを決断するにしても、また、離別、離婚を決断するにしても、そして、離別して、次の関係をスタートする決断をするにしても、欠かせないことだと思う。
人は皆、自分や相手を偽る愛の関係ではなく、本当の愛、真実に自分と相手に向かい合う愛の関係を必要としている。
ここでも、そのことを再度、強調しておきたい。
偽りの男女の関係はいつか崩壊するからだ。
それが、浮気をくり返すという行為を生むことにもなるからだ。
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