結婚後、会話がなくなる夫婦
結婚後まもなく、会話がなくなってしまったとか、話がかみ合わず関係がおかしくなってしまった、という事例を多く聞く。
「結婚前には、よく話をしていたのに、結婚したらとたんに話をしなくなってしまった」といった訴えをよく聞く。
逆に、「結婚前には、あまり口を聞かなかった人が、この頃よくしゃべる。うるさいほどよくしゃべり続ける。私に口を聞かせるチャンスをくれない。しかも、自分の意見を押しつける」といった訴えも、よく聞く。
また、こんな例もある。
「デートしている頃、彼はよくしゃべり、話が面白く、楽しかった。この人となら、きっと楽しく幸せな結婚生活が送れるだろうと思って結婚したんだけれど、結婚後はあまり話をしなくなってしまった。それで毎日がつまんないんです」
結婚して二年、一児の母の訴えである。
ある会合での発言だ。
その女性の話から判断して、自分の責任を認めず、「楽しくない」のは相手のせいだと信じ切っているように思えたので、私は、こう述べた。
相手にも責任はあると思うけど、結婚前には楽しい話をしていた夫が、結婚後に、楽しい話をしなくなってしまった原因の一つに、「あなたと話をしていると楽しくなくなる」ということがありはしないか、と考えたことがありますか?
この女性は、しばらく黙って考えていたが、やがて、ひと言、小さい声で言った。
「そういうことがあるかもしれませんね。よく考えてみます」
先に、結婚前はあまり口を聞かなかった(心を見せなかった)のに、結婚したら、口を開くようになる人がいることに触れたが、それはきっと、結婚した相手が聴き上手なのかもしれない。
心を引き出すことがうまいのかもしれない。
言い返したり、非難したりせず、なんでも受容してくれるタイプなのかもしれないのだ。
そういう相手だったら、安心して心を開けるようになるだろう。
自分を語ることもできるようになると思う。
反して、結婚前にはよく話をしていた人が、結婚後に話をしなくなったとか、自分を語らなくなるといった場合には、往々にして、結婚した相手に問題の原因があるのだ。
人の話を聴くのが下手だとか、自己主張が強すぎるとか、すぐ批判したり、非難するといったことなどが原因になっていることがあるかもしれない。
心を聞くためのエクササイズ
心を見せない人とつき合っていることに不満を感じないばかりか、安心しているという人もいるのだ。
そういう人は、自分自身も心を聞き、自分を語ることが苦手な人であって、相手が心を開いて自分のことを語り出すと脅威を感ずるというタイプの人なのだと思う。
ところがそういう人でも、時を経るにつれ、少しずつ自分を語るようになってくることがある。
そうなったときに、自分を語らない(語れない)相手に不満を感じはじめたりする。
そして、他の人に興味を抱き、関係を終わらせてしまうということが起きる。
そして、次に選んだ相手が、少しは自分を語る人であると満足する。
そうでないと、不満を感じて、また、相手を変えるということをくり返す。
いずれにせよ、どういう相手を選ぶかは、自分の心の内を見るその人の度合いによって左右されることになるわけである。
要するに、自分の心の内が見えてくる度合いに従い、自分の心を他人に開く度合いが決まると考えてよいだろう。
また、相手に自分の心を開くことを求める度合いも決まってくると考えてよいと思う。
さて、お互いに心を聞き、自分を語れるようになるための助言を記そう。
次のようなエクササイズをやってみると、心を聞いたコミュニケーションの訓練になると思う。
1.単純なテーマを選び、話し合う(たとえば、次の休日に二人で何をするのか、どこに行くかなどを決める)。
2.まず片方が自分の考え、思いを語る。
相手は自分の意見、思いを語らずに黙ってそれを聴く。
3.次に、聞き役になった人が、聴いた内容(意見、求めていること、思いなど)をリピートして、相手が伝えたかったことをきちんと理解しているかどうかを確かめる。
4.相手の言ったこと、思っていることなどを正しく理解したことが相手によって確認された後に、自分の考え、思いを相手に伝える。
5.次に、聞き役にまわった相手が、3の作業をする。
まず、簡単なテーマで話し合うことで訓練を重ねた後に、次にはやや微妙なテーマとか、二人の間のコミュニケーションの状態などをテーマにして、話し合ってみたらよい。
こんなエクササイズを、ちょっとした遊びの気分でやってみると、あまり脅威を感じないで、自分たちのことを語り合う関係作りの訓練ができるようになると思う。
関連記事
この記事へのコメントはありません。